…No.517460+事態を改善するには、現実から目を背けることなく、今、起こっている出来事を冷静かつ謙虚に受け止める必要があります。その意味では、日本の地位低下という大きな問題が社会の共通認識になったのはいい傾向だと思います。 しかしながら、日本の厳しい現状について、私たちは100%受け止めたのかというとそうではないと思います。 日本経済がほぼゼロ成長になっており、海外との格差が拡大していることは多くの人が認めるようになりましたが、そうなってしまった真の原因について、十分な議論が行われているとは言い難いからです。 国内では日本経済の長期低迷について、何度も専門家による分析が行われ、処方箋もたくさん提示されましたが、どれもテクニカルなレベルに終始しており、本質的な議論とはほど遠いものでした。 |
…No.517461+量的緩和策に代表される金融政策や財政出動、減税、賃上げといった各種経済政策や、企業に対する補助金などの産業政策は、景気を側面支援する効果をもたらす一方、本質的に経済を成長させる原動力にはなり得ません。持続的な成長を実現するには、日本経済が自らの力で成長モードにシフトする必要がありますが、日本はそのきっかけをつかむことができずにいます。 景気低迷の分析や処方箋が表面的なものばかりになってしまう最大の理由は、戦後の日本経済に対する、ある種の願望が関係していると筆者は考えています。 その願望とは「戦後日本の経済成長は、日本人の不断の努力によって実現したものであり、必然の結果である」というものです。しかし、この無意識的な大前提が必ずしも成立しないのだとしたらどうでしょうか。もっと具体的に言えば、日本の成長は、複数の幸運が作用した結果であり、偶然の要素が大きかったとしたらどうでしょうか。 |
…No.517462+日本の成長が必然だったという前提に立つと、今後も同じやり方で努力すれば、成長を実現できる可能性が高いという枠組みで議論が進んでしまいます。しかし、過去の成長が偶然だった場合、そのロジックは通用しません。世界経済の現状をゼロベースで検証し直し、どうすれば必然の成長を実現できるのか、本質的な議論が必要となるはずです。 |