…No.5302+一橋文哉の「オウム帝国の正体」を読んだ。 神奈川県警と警視庁が事件の真相に迫りながらも諸々の事情により追求を諦めざるを得なかったオウム真理教の裏にいた勢力を、著者の豊富なネットワークと国境を越えた聞き込み取材により見事に浮かび上がらせている。 オウムのまわりには暴力団に始まり、ロシアの武器商人、北朝鮮政府、統一協会、日本の政治家など様々な勢力が蠢いていた。それらをつなげていたのは"利権"である。 根っこにあるのはおそらく宗教団体に絡む利権だ。 原則的に宗教活動は非課税であり、葬儀や法要の収入、お守りやおみくじや信者からの寄付金などがすべて非課税の上、宗教活動目的での土地購入時の不動産取得税、教団研修施設名目で建てたマンションの固定資産税などが非課税となり、さらには宗教法人の経済行為は「教団維持のため」として許され、一般企業の法人税率に比べ10.5%も低い。 このため、このおいしい利権の分け前にありつこうと、暴力団や政治家が食い込んでくる。 |
…No.5303+さらにオウムの場合は、クーデターのための武装化を計画したため、拳銃から戦車、戦闘機、化学・生物兵器、果ては核兵器に至るまで、ロシアの武器商人やロシアンマフィアたちや北朝鮮勢力も絡んでくる。 オウムがロシアに武器を求めて接触する中で、ロシア側は旧式武器の売却で暴利を貪ろうとした上、オウムを利用して日本にクーデターを起こすことも画策していたようである。北朝鮮もオウムとはサリン等の毒ガス製造においてオウムが資金を提供し、北朝鮮がその金でプラントを作り、できた毒ガスをオウムが日本に持ち帰り実地テストを行なう、という協力関係があったようだ。他の宗教団体(統一教会や創価学会)も関わっていたようであるが、実際はこれらの裏にさらに別の勢力の意図が働いていた可能性もあり、真相は闇の中である。 |
…No.5304+一方、オウムに対する捜査を妨害したのは、当初はオウム利権にたかる政治家(自民党の山口敏夫)だったが、地下鉄サリン事件後は警視庁の上層部の人間の女性スキャンダルをつかんだ暴力団が、操作の手が自分たちに及ばないように警視庁に圧力をかけたようだ。これにより、一連のオウム事件はオウムの単独犯行として処理されてしまうのである。 オウムの事件を通じて、世の中が実際にはどのような力学で動いているのかを教えてくれる非常に興味深い本だ。 |
…No.5326+なー |
…No.5327+なー |
…No.5331+https://web.archive.org/web/20120606052405/http://www15.ocn.ne.jp/~oyakodon/newversion/asahara_kuchifuuji.htm |