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安彦良和『原点』で思ったこと・1Name名無し22/03/02(水)20:43:05 IP:111.108.*(enabler.ne.jp)No.4050474+ 16日17:42頃消えます  ファンの方には申し訳ない。「機動戦士ガンダム」というのは聞いたことはあったが(アニメを見たことは一度もない)、その中心にあった安彦良和さんというお名前は、一度も聞いたことがなかった。いや、安彦さんに限らず、そもそも漫画家、アニメーターの名前はほとんど知らないので他意はない。マンガを読んでいたのは小学校までなので、知っているのは、手塚治虫とかに連なる世代の人だけだ。

 サブカルと言われたこの世界に、日本の優秀な頭脳が集まっていて、表現手段としてなくてはならないものであることは、編集者としては自覚しているつもりである。硬派の本ばかりつくっているが、その分野でマンガを取り入れる新しい世界を切りひらきたいという思いもある。

 でも、おそらくそれは自分にはできない。だから、新しい頭脳を近く獲得することによって、そこに挑もうとしているわけだ。
No.4050475+ と、前置きが長くなったが、知り合いの編集者に勧められて、安彦良和と斉藤光政の『原点 THE ORIGIN──戦争を描く、人間を描く』(岩波書店)を読んだ。私とは表現する手段が異なるだけで、同じようなことを考えている人がいるんだなあというのが、率直な感想である。

 この本、東奥日報の記者である斉藤さんが、弘前大学全共闘(準備会)の中心メンバーだった安彦とその周辺に取材したもので構成され、それに安彦自身の覚書が挟み込まれるというかたちになっている。斉藤さんのことは米軍三沢基地の難しい本でしか知らなかったけれど(だから難しい文章を書く人だという印象しかなかったけれど)、本当に生き生きと描写されていて、この世界が大好きなんだなあということが伝わってくる。いい仕事ができて良かったですね。

 「同じようなことを考えている」というのは、安彦さんの政治的、思想的な考え方というだけではない。学生運動の出発点も似通っていて、最初から笑ってしまった。
No.4050476+ もちろん、安彦さんは全共闘で、私はいわゆる共産党系全学連の委員長だから、対極にあったわけだ。だけど安彦さん、全共闘のアジ演説が嫌いで、普通の語り方をして学生に伝えようとしたと書いている。ヘルメットもかぶらなかったそうだ。

 私も(8歳ばかり年下だが)、学生運動特有のアジ演説はなじめなかった。人前でしゃべること自体にはすぐに慣れてきて、何時間でもメモなしに話せるようになったが、煽って人を興奮させるのはいやだった(できなかった)。10数年前、国政選挙に立候補して人前でしゃべっているとき、「松竹さんの演説は、目の前にいる人に語りかけているみたいで、いいこともあるけれど、熱狂するような話し方をしてほしいときもある」と言われたのが印象に残っている。

 そういうこともあり、安彦さんの体験が共感できたので、この本にもスッと入っていけたわけだ。(続)

http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2947
No.4050478+ 安彦さん、高校の時は、歴史の見方を教えてくれるすごい先生がいて、その影響で民青同盟に入ったそうだ。大学に進めば、もっとすごい勉強ができると、胸をふくらませていたという。

 だけど、大学の民青の班は、そういうものでなかったらしい。拡大とか、指定文献の読了とかだけを追及され、おもしろくない。やりたいのはベトナム反戦運動だったので、独自に運動組織を立ち上げ、全共闘に近づいていくことになる。こうやって自分の頭で考え、自分で道を切りひらいていくところが、その後の漫画家としての活躍につながっていると思う。

 一方、私が体験した一橋大学の民青は、安彦さんのとはかなり違っていた。まず、私はすぐには入らなかった。

 筑波大学法案粉砕闘争とか小選挙区制反対闘争とかがあって、毎回それに参加し、大学生はデモの最後尾のため最終電車に間に合わず、新宿の深夜喫茶で連日の加盟工作を受けるわけだ。だけど、「猿が人間になるなんて、科学的にあり得ないでしょ」なんて論争をふっかけて、民青の人を困らせていた。
No.4050479+ 二年生になって入った民青は楽しかった。指定文献はあったのだろうけど、読め読めと言われた記憶はない。班の会議は、総選挙が近づいていたこともあって、みんなで政党を分担して政策の発表と議論をしていた。私は公明党を担当していて、別に議論の結果として共産党が優位ということになるわけでなくても、共産党から「指導」で入っていた人が文句を言うこともない。

 その人と飲んでいたら、突然、共産党の月刊誌『前衛』を取り出して、こんなことをいうのだ。「ここに「政治理論誌」って書いてあるだろ。これって、理論に対して政治が優先するということで、そんな見地で組み立てられる理論っていうのは、いつも疑いの目で見ていたほうがいい」。

 へえ、そんなものかと聞いていた。会議で報告される情勢の分析なんかも、「赤旗」を参考にはするんだろうが、そこには書いていないような独自理論みたいな展開がされていて、極端だなと思うことはあっても、共産党というのは指令で動くのではなくて、全部自分の頭で考えるんだと感じていた。その後も、個人的にはそういう体験が少なくなく、共産党はそういうものだと思っていた。
No.4050481+ ただ、いまから考えると、反省すべき点も多い。安彦さんは現在、全共闘体験をどう総括していくのか、当時の関係者と議論を重ねているようだが、私にも真剣に総括すべき問題はあると考えている。

 その一つが、まさに、安彦さんなど全共闘というか、当時の言葉でいうと「トロツキスト暴力集団」とか「ニセ左翼暴力集団」との闘いである。全部を書くとそれこそ、この『原点』のような本が必要となるので、ワンテーマだけ。(続)

http://www.kamogawa.co.jp/~hensyutyo_bouken/?p=2951