モアイ2@2019年11月ふたば保管庫 [戻る]

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20年8月頃消えます ダークエルフ

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。
「ししょー、師匠の知り合いにダークエルフっていないんですか?」
「いるわよ、こないだもうちに来てたでしょ」
「この前来てたのは普通のエルフさんでしたよ?」
「・・・自分の利益のためなら手段を選ばないっていろいろ悪い噂があるのよ、あの子・・・」
「ダーク・・・ですね・・・」

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。
「さあ、今日は儲け話を持ってきたわ。どうしたらいいか一緒に考えて」
「・・・あんたね・・・いつもそんなんだからダークなエルフって言われるのよ・・・」
「それってさ、ヒトによってブルーだとかイエローだとか言われるんだけど?どうして?なんで?」
「う・・・」
「ししょー!お茶を持ってきました!!(ダークなエルフさんの分には特製の痺れ薬入りですけど)」

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。
「ああ、やっぱり夏って解放された気分になるわね!さあ、今日も張りきっていきましょう!!」
(師匠、ダークなエルフさんって意外と堅実なんですね。でもなんで僕たちが海水浴場でタコ焼きを作ってるんですか・・・?)
(タコが安く手に入ったんだって・・・友達が少ないんでしょ・・・)

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。それはある冬の日の朝のこと。魔法使いのおうちの周りは一面の雪景色でした。
「うわあ、寒いと思ったらこんなに積もってたんだ!」
「ふーん、まるで粉砂糖を振りまいたみたいね・・・」
「師匠にしては詩的な表現ですね」
「これだけの粉砂糖、かき集めたらどれぐらいで売れるかなあ・・・」
魔法使いの弟子は何か怖いものでも見るように師匠の顔を見上げるのでした。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。その日、魔法使いの弟子は物置の片付けを命じられていたので朝から仕事に取り掛かっていました。積み上げられたガラクタを整理して言われた通りに分類していったのですが魔法使いの弟子はそこから一枚の肖像画をみつけたのです。埃まみれの額縁の中からどことなく悲しげな表情の女の子が彼を見つめています。魔法使いの弟子はそれを師匠のところに持っていきました。
「師匠、これが物置から出てきたんですが・・・」
「・・・ああ、そんなのも置いてあったかしら。それがなに?気に入ったとか言わないでよ」
「僕に譲ってくれませんか。お金はないけど何でもしますから」
「・・・何でもするのね。何でも・・・」
あらぬ妄想に耽りはじめた魔法使いの姿に殺気を感じ魔法使いの弟子はにじるように後退りをするのでした。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。結局女の子の絵は譲ってもらえませんでしたが居間の壁に飾ることは許してくれました。魔法使いがなるべく目立たないようにと言っていたので隅っこの方にでしたが。さいわい大きな傷みもなく額縁を掃除して埃を掃っただけでもいい感じです。魔法使いの弟子は額縁の中の女の子に会うのが毎日の楽しみになりました。
「ところで師匠、この女の子って師匠の親戚か何かですか?」
「・・・まあね、そうかもね」と魔法使いは曖昧な返事をしたのですが本当は(これは昔の私だ!)と言いたかったのです。でもそれを言うのはやめときました。うかつなことを言うと弟子のモチベーションというかやる気が失われてしまうと思ったからです。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。魔法使いの身の回りの細々とした雑用は弟子である彼の仕事でしたが、その中には師匠の食事の世話も含まれています。食材の調達は近くの村に買い出しに行ったりしますが、調理の方は魔法使いの蔵書の料理本を参考に彼が行うことになるのです。ある夜のこと、就寝していた魔法使いの弟子は枕元にわだかまる不思議な気配で目を覚ましました。「あるじからのことばをもうしあげます」と、その見えない存在は彼に言いました。魔法使いの弟子はそれが師匠の使い魔であるのに気づきました。
『あ、もしもし、私だけど。明日の晩御飯は魚料理がいいな。そのつもりで準備しといてね』
「えーっ!いきなりそんなことを言われても・・・!」
「伝言は以上ですにゃ」
急速にかき消えていく使い魔の気配を感じながら、魔法使いの弟子は布団の中で頭を抱えるのでした。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。ある朝のこと、起床して部屋に掛けてある小さな鏡の前に立った魔法使いの弟子は自分の頭におかしなものがあるのに気づいて唖然としました。どうも動物の、しかもどうやら猫の耳のようです。
「ししょー、なんか起きたらネコミミが生えちゃってるんですが・・・」
「あはははは、なにそれ!かわいい!」
「笑ってないでなんとかしてくださいよう」
「ねえねえ、にゃーって言ってみて」
「・・・にゃー」
いそいそと、衣装棚からメイド服を取り出す魔法使いの姿を呆然と見つめながら、魔法使いの弟子は自分が陥れられたことに気づくのでした。

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本文無し


むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。今日は師匠の趣味につき合って歌劇団ごっこをやってみます。
「おすかる〜!」
「おんどれ〜っ!!」

「・・・何かヘン?間違ってないわよね・・・?」
「知りませんよ・・・師匠がこう言えって・・・」
もちろん「おんどれ」ではなくアンドレなのですが、ちょっとした勘違いのようです。

おんどりゃ〜おつかれ〜
火に油、注ぐことに??

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。魔法使いの住居は、わりと大きめのお屋敷といっていいほどの規模がありました。敷地もちょっとしたものでしたが、何しろ住んでいるのは魔法使いとその弟子だけだったので庭も建物も荒れ放題といった具合です。春先の気持ちのいい一日でした。魔法使いはお気に入りの詩集を持って庭木の木陰でそれを広げていたのです。
「てーへんだー!あっ、師匠!大変ですぜ!!」と、そこに駆けつけてきたのは魔法使いの弟子です。
「・・・なんなの、何が大変なの・・・」
「てーへんかけるたかさわるに、なんちゃって」
いかにも(ぼく面白いこと言ったでしょ)的なヘラヘラ笑いをする弟子の姿を見つめながら、魔法使いの心の中に静かな怒りが沸き上がってくるのでした。

彼がその部屋に入ったのはちょっとした偶然でした。埃の溜まった薄暗い部屋の中に誰かいるとは思っていなかったのです。しわがれた低い声で誰何されたとき、彼はすくみ上がってしまいました。「ほう、魔法を使うようですね」とその声は言いました。「まだまだ未熟ですね。魔法の力に仕えるより、唯一にして偉大なる存在の栄光に奉仕しようとは思いませんでしたか。私のように」彼はその言葉で、話している相手が僧侶であることに気づきました。しかもかなりの高齢者のようです。魔法の力に仕える者、と言われて彼は自分がひどく利己的な人間だと言われたように感じたので、魔法使いの弟子はそれを言い返しました。「利己的であることに何の不都合がありますか?奪い犯し殺す。私がそういうことをしないからといって、他人より窮屈に生きていることにはなりませんよ。誰しも心の赴くままに生きている」彼は少しだけ悪戯をしてみることにしました。師匠の影響かどうかは定かではありませんが、彼は偉そうな年寄りをからかってみたくなったのです。

簡単な魔法なら彼にも使えます。その辺にある小物を僧侶に放り投げてみるつもりで魔法使いの弟子は薄暗い部屋の中を油断なく観察しました。「ははは、この部屋で魔法は使えませんよ」僧侶の愉快そうな声が聞こえます。「この部屋では私であっても必要な物は自分の足で取りに行かねばならないのです。私にとって最も忠実な召使いは自分自身である、ということです」かっとなった彼はさらに言い返そうと身構えましたが、いつの間にか彼の背後に師匠である魔法使いが佇んでいました。「この異端者の破戒坊主。私の身内にちょっかいを出さないでよ」魔法使いの言い方は穏やかで、二人は知り合いのようです。「おやおや、あなたのお弟子さんでしたか。まだ破門はされていないようですから、異端というわけではないですよ」その高齢の僧侶は、魔法使いとの会話を楽しんでいるかのようでした。「あんたも、こんな坊主の話を真に受けるんじゃないわよ。用事はは済んだから帰るわよ」師匠について部屋を後にする彼の耳に僧侶の声が入り込んできます。「それでは、またいつか・・・」と。

>用事は済んだから帰るわよ

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。今日の彼は師匠である魔法使いのお供で、この地域で最も大きい街にやって来ました。たどり着いたのは、こじんまりとした一軒家です。魔法使いはここの主人である呪具職人に用事があってやってきたのですが、どうもいきなりは入っていけない事情があるようです。
「ここが例の職人さんの家ですか・・・」
「まあね、いま考えている魔法の実験には、どうしてもここの呪具が必要なのよ」
「お金では動かない頑固職人ねえ・・・何か手土産でも持っていったらどうでしょう。色仕掛けとか・・・」
「・・・やっぱり、それしかないか・・・」
そう言う師匠の視線が自分に向いているのに気づき、青ざめた表情の魔法使いの弟子は、にじるように後ずさりをするのでした。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。
「ぼぼぼ、僕が何かするんですか・・・!?」
「・・・偏屈な頑固者だけどそういう趣味はないみたいよ・・・はあ、本職の女の子連れて来る時間はないし、やっぱし私がやるしかないか・・・」
「・・・師匠が色仕掛け・・・?」
「くすん、こんなもんかなあ・・・」
魔法使いは少しだけスカートの裾を持ち上げて、ぎこちない引きつった微笑を浮かべてみるのでした。

むかしむかし、とある大陸の片隅にエルフの魔法使いと人間の男の子(弟子)が住んでいました。
「師匠、何をやってるんですか!」
「な、なによ・・・」
「まがりなりにも色仕掛けなんですよ!?もっとガバーッといくべきです!!」
「あんたね!!!」

(なにやら表の方が騒がしいのう・・・)と思いながら玄関に出てきた老職人の目の前で、魔法使いとその弟子は取っ組み合いの喧嘩をおっぱじめてしまったのでした。