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■診療報酬、食い物 暴力団、ブローカー暗躍 「医療・福祉事業」の倒産件数が今年、最多を突破する見込みとなる中、暴力団やブローカーらが医療機関を食い物にしている実態が明らかになった。医療機関の診療報酬請求権の売買を繰り返して利益を上げているという暴力団幹部は、産経新聞の取材に「病院ビジネスは金になる。まさにぬれ手であわだ」と証言。国の医療制度を後ろ盾にした効率的な資金源として位置付ける構図が浮かび上がった。 「狙いやすいのは、理事長の権限が強いワンマン経営の病院。トップの信頼を得さえすれば、経営中枢に入り込み、自由に操れる」 関東地方のある指定暴力団幹部はこう語る。幹部は東海地方の総合病院など複数の医療法人に暴力団幹部であることを明かさず、医療関係者として接近。いずれの医療法人も患者数の減少などで経営難に陥っていたという。 幹部は、経営陣に診療報酬を健康保険組合に請求できる「診療報酬請求権」を売却して運転資金を工面するという提案を承諾させた。さらに関係する金融会社に請求権を売却させ、それを入手。最終的にブローカーに請求権を高値で転売し、利益を得たという。 |
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幹部は「診療報酬は国の医療制度が元になっており、回収の安全性が高い。通常の債権と比べて売却しやすく、とりっぱぐれがない。うまみが大きいので、診療報酬を扱う暴力団は増えている」と明かした。 病院経営を食い物にしているのは暴力団だけではない。「乗っ取り屋」と呼ばれるブローカーの存在がある。この幹部と同様、ブローカーが「債務整理の請負人」などと称して、苦境に陥った医療法人の経営側に入り込んでいるという。 ブローカーが医療法人を私物化し、資産を吸い取ったとみられるケースがある。警視庁は7月、千葉県内の医療法人をめぐって、大手リース会社から約8億8千万円をだまし取ったとされる事件を摘発した。 関係者によると、詐欺容疑で逮捕された5人のうち、元税理士の男はここ数年、「乗っ取り屋」の代表格として知られている人物だった。男は経営不振の病院に近づき、配下の医師や事務長を送り込んで実質的に経営権を掌握、診療報酬請求権の現金化を繰り返していたとされる。 |
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千葉の事件で、男は10億円の買収資金を用立てる際、医療法人内部の協力者に診療報酬請求権2億円分を売却させて資金を確保した形跡があるという。経営権を買い取った後、逮捕容疑となる詐欺事件を起こしていた。 医療機関が経営難に陥る要因について、全国で複数の病院売買にかかわった医療コンサルタントは「患者獲得のための設備投資が過大になると、経営が圧迫される。法人運営のノウハウが乏しい医師が経営トップになる傾向も強く、放漫経営に陥りやすい」と話す。 その上で、「診療報酬の低下で経営環境のさらなる悪化が予想される。病院が暴力団やブローカーに狙われないよう生き残るには、規模に見合わない過剰な設備投資を控え、不採算の診療科を閉鎖するなど経営資源の選択と集中を進める必要がある」と指摘した。 |
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◇ 診療報酬請求権 医療機関が、患者らへの医療行為などで得た診療報酬を健康保険組合や市区町村といった「保険者」に請求できる権利。診療報酬は請求から支払いまでに2カ月ほどかかるため、迅速に現金化する手段として請求権が債券化されることがある。レセプト(診療報酬明細書)にちなんで「レセプト債」とも呼ばれる金融商品で、債権回収会社やファンドによって売買されている。 |
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病院まで経営が苦しいのか |