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中国の若者たちよ、マルクスを読もう
中国の新華社からメールで質問状が届いた。 中国でもマルクス生誕200年がにぎやかに祝われるようだけれど、その中で「マルクス再読」の機運が高まっている。その流れの中で石川先生との共著『若者よマルクスを読もう』も中国語訳が出て、ずいぶん売れている(らしい)。

質問状には6つの質問があった。僕の方はこんなお答えをした。

1.『若者よ、マルクスを読もう』が出版され以来、日本ではベストセラーになり、中国でも大好評となり、愛読されています。その原因はどこにあるのでしょうか。なぜ資本主義社会の日本にはマルクス主義を愛読する人がこんなに多く存在しているのか、その原因は何だと思われますか。

日本では、マルクスは政治綱領としてよりはむしろ「教養書」として読まれてきました。つまり、マルクスのテクストの価値を「マルクス主義」を名乗るもろもろの政治運動のもたらした歴史的な帰結から考量するのではなく、その論理のスピード、修辞の鮮やかさ、分析の切れ味を玩味し、テクストから読書することの快楽を引き出す「非政治的な読み方」が日本では許されていました。

マルクスを読むことは日本において久しく「知的成熟の一階梯」だと信じられてきました。人はマルクスを読んだからといってマルクス主義者になるわけではありません。マルクスを読んだあと天皇主義者になった者も、敬虔な仏教徒になった者も、計算高いビジネスマンになった者もいます。それでも、青春の一時期においてマルクスを読んだことは彼らにある種の人間的深みを与えました。

政治的な読み方に限定したら、スターリン主義がもたらした災厄や国際共産主義運動の消滅という歴史的事実から「それらの運動の理論的根拠であったのだから、もはやマルクスは読むに値しない」という推論を行う人がいるかも知れません。けれども、日本ではそういう批判を受け容れてマルクスを読むことを止めたという人はほとんどおりませんでした。「マルクスの非政治的な読み」が許されてきたこと、それが世界でも例外的に、日本では今もマルクスが読まれ続け、マルクス研究書が書かれ続けていることの理由の一つだろうと思います。

2.マルクス主義の日本への影響についてご説明いただけますか。特に現在の日本への影響について。

戦後の社会運動の多くはマルクス主義の旗の下に行われました。特に学生たちの運動はほとんどすべてがマルクス主義を掲げていました。ラディカルな社会改革のための整合的な理論としてはそれしか存在しなかったからです。しかし、60年安保闘争でも、60年〜70年代のベトナム反戦闘争でも、実際に日本の学生たちを深いところで衝き動かしていたのは反米ナショナリズムだったと思います。対米自立をめざすこの国民感情はその後「経済力でアメリカを圧倒する」という熱狂的な経済成長至上主義にかたちを変えて存続しました。そこにはもうマルクス主義の影響は見る事ができません。
ですから、現代日本にマルクス主義がどう影響しているのかという問いには「政治的理論としては、ほとんど影響力を持っていない」と答えるしかありません。

日本共産党はマルクス主義政党ですが、選挙で共産党に投票する人たちの多くはその綱領的立場に同調しているというよりは、党の議員たちが総じて倫理的に清潔であり、知性的であり、地域活動に熱心であるといった点を評価していると思います。

ただ、日本では1920年代以後現代にいたるまで、マルクス主義を掲げる無数の政治組織が切れ目なく存続し続け、マルクス主義に基づく政治学や経済学や社会理論が研究され、講じられてきました。マルクス主義研究の広がりと多様性という点では東アジアでは突出していると思います。そのせいで、マルクス主義者でなくても日本人の多くはマルクス主義の用語や概念を熟知しており、そのスキームで政治経済の事象が語られることに慣れています。それは間違いなくわれわれのものの考え方(とくに歴史をとらえる仕方)に影響を与えているはずですけれど、それを「政治的影響」と呼ぶことは難しいと僕は思います。

http://blog.tatsuru.com/
マルクスの夢 中国の夢(大機小機)
1818年5月5日、ドイツ南西部トリーアのユダヤ人弁護士一家に男の子が生まれた。長じて、ひげもじゃの革命家になる。

 生誕200年を記念して3トンもあるカール・マルクス像がトリーア市に贈られた。贈り主は中国政府。

 中国は、憲法前文にレーニンと並び、マルクスの名を掲げる。昨秋の共産党大会での習近平(シー・ジンピン)演説は「新時代の中国の特色ある社会主義」を「マルクス主義の中国化の最新の成果」と自賛した。マルクス思想の“中国化”とは、はて。

 中国は矢継ぎ早に市場開放策を打ち出している。自動車の関税を引き下げ、銀行、証券、保険などの外資規制を緩和する。

 海南島の自由貿易港化もそのひとつ。中国の専門家の解説だと「経済の自由度」で世界トップランクの香港を手本にするという。

 マルクスが葬ろうとした資本主義への逆走か、と早合点してしまいそうだ。

 だが一方で、西側が期待した「民主化」に背を向け共産党独裁を強めている。

 上場企業で、社内に共産党組織を設ける、重要な経営決定は事前に社内党組織に諮る、などの定款改正が相次いでいる。もちろん、政権の意向を忖度(そんたく)してのことだ。

 習近平政権になって思想や言論への締め付けも強まった。特にネットメディアへのグリップがきつい。

 交流サイト(SNS)やニュースサイトなどで、罰金やサービス停止を命じられるケースが増えた。政権の意を迎えようと、自前の検閲要員を1万人に増やす大手ネット業者もいる。

 デジタル技術を共産党の統治に活用する手法を、ドイツの中国ウオッチャーは「デジタル・レーニン主義」と名づけている。人工知能(AI)と監視カメラ網による「天網」システムは、顔認証で犯歴データなどと照合して犯罪者を摘発する。思想犯も例外ではない。ジョージ・オーウェルの小説「1984年」の監視国家さながらだ。

 習近平氏が言う「中国の夢」とは「中華民族の偉大な復興」の実現という。ナショナリスティックな夢である。「万国の労働者、団結せよ」と訴えたマルクスとは距離がありそうだ。

 「共産党宣言」の起草者がよみがえり、中国を評せば「頼もしい」なのか「おぞましい」なのか。(手毬)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30032030R00C18A5920M00/

>党の議員たちが総じて倫理的に清潔であり、知性的であり、地域活動に熱心であるといった点を評価していると思います。
それって一体どちらの国の共産党のことですの?

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>人はマルクスを読んだからといってマルクス主義者になるわけではありません。マルクスを読んだあと天皇主義者になった者も、敬虔な仏教徒になった者も、計算高いビジネスマンになった者もいます。それでも、青春の一時期においてマルクスを読んだことは彼らにある種の人間的深みを与えました。
誰だと思えば内田樹か。お前の本をよくネタにする武田鉄矢が、主張の方向性としては真逆になるんだよなぁ。ついでに、レーニンもスターリンも、マルクス主義者じゃねぇだろ?帝政ロシアを倒し、自分の権力を正当化する方便、単に道具として使ってるだけだろ。